ほとんどの場合、映像は文字に及ばない

宇宙飛行士選抜試験」という本を読んだ。
 
2010年の本なので、先日、宇宙から帰ってこられたばかりの油井さんが宇宙飛行士として選ばれる経緯が書かれている。
油井さんはどのようにして宇宙飛行士になったのか。
また、どのような人たちがライバルだったのか。
今読んでもタイミング的に最高だ。
 
その選考過程は非常に示唆に富んでいて、宇宙飛行士という仕事の困難さや、過去の宇宙飛行士、毛利さんや向井さん、そして若田さんがなぜあれほど人間的に魅力があったのかを知ることができる。
そして、宇宙飛行士の選考とは、レベルは大きく違えど全ての選考と同じフォーマットで行われていることが判る。
就職活動を控えている人や、企業の人事担当者こそ必読。
大きな学びが得られるだろう。
 
この本にはユニークな側面がある。
著者はNHKの職員であり、元は50分のドキュメンタリーとして放送されたものなのだ。
映像を生業にしている人が、映像で作ったにも関わらず、なぜ改めて文字で残さなければならなかったのか。
これが僕には痛快だった。
 
最近「下町ロケット」がドラマ化されて話題になったようだが、何年も前に小説を読んだので、何をいまさらと感じていた。
話の筋を追いたいだけならドラマでも良いだろう。
しかしそれは名作の粗筋を読むようなものだ。
おそらくそういうサイトがあるだろうと思って検索したらヒットしたが、そこから得られる学びは皆無だ。
 
実際のところ、時間単位あたりの学習量は、映像より文字のほうが遥かに上なのだ。
ストーリーを理解させる力は映像のほうが上だ。
なぜならばどんな受身な人でも何となく伝わるから。
しかし、真の学びは文字でなければ難しい。
この本も、映像では伝わらないから文字にしたのだ。
 
例えば小野不由美の十二国記シリーズを、僕はアニメーションで観る気には全然ならない。
漢字の表意文字としての美しさも大きな魅力で、物語に深く関わっているからだ。
真に理解するには文字で読み直す必要があるため非効率だし、映像が先にインプットされるとミスリードが起きる。
そもそも映像的には山田章博さんの美しい挿絵で十分だ。
僕はこれからも文字ベースで知識を得るつもりだ。
 
ただし、文字に欠点がない訳ではない。
大きな問題ではないけれど、発音が判らないことだ。
僕は宇宙飛行士の油井さんをアブライさんだと思っていた。
以前にも同じ経験をしたことがある。
大阪府知事時代の橋下さんを「ハシシタさんっているじゃない…」と話をすると「あれはハシモトって読むんだよ」と諭された。
テレビを観ないから発音を知らなかったのだ。
とはいえこんなデメリットは、些末なことなので気にする必要はない。
自分が知らなくても周囲のほとんどの人が知っているので教えてもらえばいい。
当然だが、誰もが知っていることに価値なんてない。
 
価値があるのは、多くの人が気付いていない視点や学びなのだから。

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