納豆玉子ご飯の正しい食べ方

納豆と玉子を混ぜて味付けし、ご飯にかけて食べる。
誰だってやったことがある王道の組合せだ。

僕も納豆を食べる時は玉子と一緒に食べる。
納豆は好きだが、糸を引くのが苦手なので、納豆単体では食べない。
色んなものを加えると糸が引きにくくなるので、色々試したが、今のところ玉子が一番簡単だった。
ちなみに納豆を加熱すると糸を引かなくなるので昔はよくやっていたが、ナットウキナーゼの活性が低下すると知って止めた。

正確には糸を引くことそのものよりも、糸を切るために箸を振り回すのがダメなのだ。
朝、牛丼のチェーン店に入ると、しばしば箸をぶんぶん振り回して納豆ご飯を食べているおっさんがいるので、利用するのを止めた。
僕にとってはクチャ食いと同じくらい苦手だし、自分一人でも糸を気にしながら食べたくない。

玉子を混ぜれば糸が切れるので安心と思っていたが、ある日、玉子の卵白と納豆は食べ合わせが悪いと知った。
納豆にはビオチンというビタミンの一種が含まれいて、白髪、筋肉痛、疲労感、食欲不振など有益な効果をもたらすのだが、卵白に含まれるアビジンという蛋白質がビオチンの吸収を妨げるのだとか。
だから納豆玉子ご飯は卵黄だけ使えとの指摘だった。

しかし、残った卵白はどうしろというのだろう?
別に加熱して食べろとか、味噌汁に入れてしまえとか、色々やり方はあるようだ。
でもそれって面倒ではないか。

納豆玉子ご飯を食べるのは多くの場合、朝だろう。
朝から卵白だけ別に調理するとか、そんなことするか?
少なくとも僕はしない。
だったら卵白は捨てるか、ビオチンの摂取を諦めるかの二者択一か?と思っていた。

しかし、卵白は良質な蛋白質なので、スポーツをやっているなら積極的に摂取したい。
ハードなトレーニング指南書では、卵黄は脂肪が多いから食べるなと指示しているくらいだ。
さらに、玉子を生のまま食べると消化吸収が悪いことが判った。
玉子の状態で最も消化吸収に優れているのは温泉玉子とのこと。
つまり、卵白がとろとろに固まっていて、卵黄が半熟な状態だ。
カチカチに加熱した玉子はやはり消化吸収が悪くなる。

では温泉玉子を納豆に混ぜればいいのだろうか。
でも温泉玉子を作るのは面倒だし、しくじると殻に白身がへばりついてしまう。
スーパーで完成品を売っているが、生玉子に比べると著しく値段が高い。

さらに調べると、アビジンがビオチンの摂取を妨げるのは、卵白が生の場合のみで、加熱すると活性が落ちて、ビオチンの摂取の邪魔をしないとのこと。
とすると、温泉玉子は卵黄が固まっていて、卵白が生っぽいので、消化は良くても、ビオチンの摂取という観点では良くないことになる。

そこで、安く簡単に、栄養的にも食べ合わせが良く、そして何よりも旨い納豆玉子ご飯が食べられる合理的な方法はないか?と僕は考えた。

ここで多くの人は「そんなこと気にしてたら食べられない」とか「そんなこと考えてたら疲れる」と言うけれど、それでも考え続けることが大切。
僕が納豆玉子ご飯を例題に書いているのは「どこにも答えが書いてない問いを問い続ける力」の話なのだ。
田坂広志さんが「魂の力」と呼んでいるものと僕は近いと思う

食に関することであれば、化学調味料、食品添加物、残留農薬などの話をすると、肯定派、否定派ともに思考停止して考え続けていないと感じることが多い。
こういうのは学校のテストとは違うので、どこかに答えが書いてあったりはしない。
10年前の常識が覆されることも多い。
そうするとまた最初から考え直す必要がある。

それが疲れるから嫌だという人は答えを得たことにして、問い続けることから逃げてしまう。
そうすれば、その答えに固執してればいいのだから楽だ。
料理人なら「自分は○○にこだわっている」というのがそれ。
だがそれは「自分は思考停止している」と宣言しているのと同義であり、大変恥ずかしいことなのだ。
そんな立脚点から新たなステージは望めない。

よって僕がたどり着いた納豆玉子ご飯の食べ方も、タイトルに「正しい」とキャッチーなことを書いておきながら、暫定である(笑)
もっと旨くて、もっと簡単で、もっと合理的な食べ方があるかもしれない。
どうやったらもっと良くなるのだろう?と考え続けながら、手を動かすことが重要なのだ。

さて、前振りが長くなったけれど「正しい」納豆玉子ご飯の作り方を紹介しよう。
玉子1個、納豆1パック、ご飯、醤油を揃える。
小さくて深めの鉢に水を入れ、それを捨てる。
これは器の内側に薄っすらと水をコーティングするための作業だ。

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この小鉢に生玉子を割り入れ、そのまま電子レンジで加熱する。
器や玉子の大きさ、電子レンジの出力で時間は変わるだろうが、何度かやればすぐに勘が掴める。
僕の家にある電子レンジは500wで、Mサイズの冷蔵庫から出したばかりの玉子だと40秒が適当。
ラップフィルムは不要だ。
加熱が足りなければ10秒単位で追加しても良いが、余熱でも凝固が進むので留意のこと。
こうすると白身はトロトロに固まって、黄身も少し生っぽいが、加熱されてねっとりした旨さが出てくる。

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ちなみに最初の水が効いているので、玉子が器に張り付くことはなく、するりと剥がれる。
この器の中へ納豆を加え、好みに味付けすればいい。

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汚れる器が一つで済む。
僕は付属のタレの味が嫌いなので、芥子だけ使い、醤油を加える。
これをご飯の上にかけて食べるのだ。
合理性を追求するなら、茶碗で玉子を加熱し、そこへ納豆を加えて混ぜ、上から慎重にご飯を盛れば汚れる器は茶碗だけとなる。

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ポイントは玉子の処理。
電子レンジを使って温泉玉子の逆バージョンを作るのだ。
もちろん、1分以上加熱すると爆発する可能性があるので要注意。
最初は20秒くらいにして、少しずつ時間を伸ばすと良いだろう。

これが今の僕の朝の定番で、野菜ジュースや果物を合わせて食べることが多い。
栄養的に優れていて、手間がかからなくて旨いので、納豆玉子ご飯を食べる機会があれば試してほしい。

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