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2008/06/08(日)
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鹿児島のCAINOYA
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出張が続いており、先週は鹿児島まで行った。
あまり時間がなかったし、仕事の終りが遅くて、それほど食べ歩きはできなかったけれど、僅かな時間を活用して食べ歩いた。 その中で最も印象的だったのが、鹿児島市の「CAINOYA」だ。
この日は一人で19時から予約をして訪れた。 店に入ると厨房に面してカウンターが用意されており、一人客でも居心地が良い。 厨房は見事に磨き込まれており、これは旨い料理が食べられそうだという予感が確信に変わる。 新しくて綺麗なのではなく、磨かれて美しい厨房からは、必ず旨い料理が運ばれてくる。 これは僕の経験則だ。
シェフは一見して頑固そうだが、そういう人が旨い料理を作ることを僕は知っている。 方向性と焦点が定まった料理を作るためには信念が必要だし、信念がある人はどうしても頑固っぽくなってしまうのだ。
メニューを見ると、目くるめく内容で、あらかじめ5,500円のコース(税サ別)を頼もうと思っていたが、じっくりと読み込めば読み込むほど、7,500円のほうがお得であることが判った。 これだけのメニューを見せられたら、これはもう、7,500円のコースしかあるまいと思い、最近、辛いことが続いていたのもあり、奮発しても楽しむことに決めた。
料理はかなりの高水準。 素材の持ち味を素直に出したいという気持ちと、それをどう料理として昇華させるのかを悩みつつ拮抗させたような料理群。 鹿児島市(人口60万人)という、広島市(116万人)の半分ほどの地方都市で、これだけの素材を扱い、高い意識を持って取り組んでいることは、偉業と言ってもいい。 ちなみに、同じレベルの素材を取り扱っているイタリアンレストランは、僕の知る限りだけど、広島県内にはない。
ただ、これはシェフにも伝えたのだが、まだ彼の本当に作りたい料理には至っていないように感じた。 彼自身、やりたいことがたくさんあって、素晴らしい素材を活かしたくて、切なくて、もどかしくて、自分自身に苛立ちつつ、のたうち回りながら前に進んでいる印象を受けた。 こういう店は、何かの拍子に一気に伸びる。 「呉下の阿蒙に非ず」だ。
もちろん、現在の料理も素晴らしくて、特に前菜の稚鮎のリゾットや純血バスク豚の自家製サルシッチャには痺れた。 細かく書くと長大になるので避けるが、判る人なら感動すること間違いなし。
パスタは全て手打ちで、もちろん旨かったのだが、ハーフを2種類食べるよりもフルサイズを1種類食べたほうが良かったかな?と思った。 シェフの作るパスタは丁寧だけどスタンダードなものが多いので、フルサイズで食べてこそ、起伏や余韻が楽しめるように思うのだ。 次回はフルサイズを2種類食べたいと思った。
メインはオテイゼさんという生産者が育てた、100%純血バスク豚皮付きバラ肉のクロッカンテ。 皮はパリパリ、脂身はとろとろにジューシーで、脂身の苦手な僕には重い一皿だったが、実は今になって最も印象に残っているのはメインのこの皿なのだ。
皮のパリパリ感、脂の軽さとぷちぷち弾けるような食感。 甘くて軽い独特の旨さ。 あぁ、これが純血のバスク豚なのかと、僕の豚肉史に残る旨さだった。
そして、これらの料理を食べている途中、その日は客が少なかったこともあり、途中からシェフとお喋りしながら料理をいただいた。
ワインも彼のお勧めで、大胆かつ繊細な彼の料理に合うモンテプルチアーノを出してもらった。 食後にはANGIALISというコク深く濃密なデザートワインを、そしてCARACCIという素晴らしいフレーバーのグラッパもいただいた。
結果、正直に吐露するのだが、僕はこの店に5時間30分も滞在してしまった。 他の客が帰ってからは、シェフと2人で話し込んでいたというのもあるけれど、レストランにおける最長不倒記録である。
そして、つくづく僕らしいなと思うのだが、この日を境に、かなり元気が回復した。 まだ少しダークサイドに引き摺られそうになるけれど、この日、この店で過ごしている間は、100%元気を回復していた。
レストランの語源は、ラテン語で「良好な状態にする」という意味だという。 僕は久々に本物のレストランへ訪れたのだが、僕の心の回復には、レストランが最高の薬なのかもしれない。
シェフにまた来てくださいと言っていただき、僕もいつになるか判らないけれど、また来ますと言って店を出た。 今日になってシェフのブログを見ると、たくさん話をしたそのエッセンスが、彼の中でいくらかの化学変化を呼び起こしたようだ。 http://blog.livedoor.jp/cainoya1931/archives/2008-06.html #6月5日の記事
僕の言葉が、シェフの中で少しでも役に立ち、今後の店の運営にプラスになったのであれば嬉しい。 もし、この店が広島市にあれば、僕は全力で応援するんだけどな。 おそらく、10年後には九州地方を代表する名物レストランになっていると思う。
最期に少し苦言を申し上げたいのだけれど、鹿児島の人たち。 こんな志の高い店を支えなくてどうする。 この店はあなたがたの街の財産だ。 財産ならば守るのが当然だろう。
僕は1年に1度も行けないかもしれなけれど、もしこの店を支えてくれなかったら、鹿児島の人たち、恨むからね。
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