|
2006/10/04(水)
|
|
老舗の味
|
ある老舗のお好み焼き店でお好み焼きを食べた。 初代が焼いておられた頃、一度訪れたが、繁華街にある分、値段が高く特別旨いとは感じなかった。 しかし、代替わりしたようなので、再訪しようと考えたのだ。
頼んだのはそば肉玉750円。 繁華街価格は概ね700円なので、平均よりやや高めだ。 トッピングしようとしたが、イカ天が+100円、ダブルにすると(麺と玉子がW)1,000円である。 うぉ、高っけー。広島のお好み焼きで1,000円かよ。 ということで、生粋の広島人たる僕には、シンプルなお好み焼きしか選択肢がなかったのだ。
焼くところを見ていると、生地を引いて、気に入らないのか剥がして捨てる。 もう一度延ばして、やはり剥がして捨てる。 三度目にやっと気に入ったらしく、上に魚粉を振り始めたが、何だか芝居かかってるように感じた。
最初の生地は明らかに小さすぎ。 引き始める前から、僕ですら違和感を感じた。 二枚目の生地は特に問題なかったと思う。 端の辺りに少しだけビビリが出ていたが、僕の経験上、焼くのには問題ないレベルだったと思う。 そもそも、端のビビリを気にするほどキャベツを入れないのだ。 これって、職人肌の演出か?と思った。 でも、焼いた後は黙って漫画を読むのに熱心で、僕が店を出るときもずっとそのまま。 職人っぽさは欠片も感じない。 そもそも、毎日お好み焼きを焼いているのに、2度も失敗するなんて職人らしくない。 単に神経質なのだろう。
焼き方は、生地、魚粉、キャベツ、モヤシ、化調、胡椒、ガーリックパウダー、バラ肉3枚でひっくり返す。 キャベツはかなり少なめ。 えぇっ?それだけ?と心の中で叫ぶほど。 だって750円だぜ? 例えば「えんじゃ」のお好み焼きは840円と高いが、麺やキャベツの量がデフォルトで多いから許せるんじゃないか。 まいったなぁと思いつつ経過を見守る。
値段からして生麺と思っていたら蒸し麺。 んー、一体どこへ原価をかけているのだろう? 蒸し麺を鉄板に置き、ラードと水をかけて箸でほぐす。 へぇ、箸でほぐすのは珍しいな。 他でも箸を使う場面があるのかな?と思ったが、そのときにしか登場しなかった。 わざわざ麺ほぐしにだけ箸を使うのがこの店の流儀なのか。
麺はしっかりほぐして、化調、胡椒、ガーリックパウダー、唐辛子粉で下味を付ける。 野菜にも麺にも下味をしっかり付けるようだが、味が濃くなり過ぎないか?という不安が首をもたげる。 続いて麺を円盤型に成形し、上からお好みソースを糸状に飛ばして、満遍なく振りかけた。 この時点で味が濃いことは確信できた。
麺の上に野菜と肉の本体をのせ、麺の側に潰した玉子を張り付ける。 ソースは普通のソースとピリ辛ソースがあるというので、ピリ辛にしてもらった。 仕上げに青海苔を振って出来上がり。
食べると予想通り味が濃い。 ガーリックパウダーと胡椒の風味が強くて、そこへソースの味がプラスされる。 これらの味でほぼ支配される感じだ。
広島のお好み焼きは、夜よりもむしろ昼に食べる料理だけど、ここまで味が濃いと酒を呼ぶので夜の料理になるのか。 鉄板焼きを食べ、ビールを飲み、〆に酔っ払って食べるのであれば、これくらい味が濃いほうが好まれ、大きいと残してしまうということかもしれない。 誰が書いたものか僕には判らないが、色んなサイン色紙が飾ってあったので、芸能人などには喜ばれるのか?
「老舗の味」というのは、長い間その味を支えてきた客がいるということだから、大事にされるべきと思うし、僕も尊重したいのだが、この店の場合は固有の魅力が判らなかった。 お好み焼き店の場合、もう一店そういう店がある。
元祖を自称するほど黎明期から続く老舗だけど、代替わり後に訪れたら、強烈なお好み焼きが供されたのだ。 繋ぎの生地が多過ぎたのだろう、モヤシやキャベツの隙間に、糊状の小麦粉がねっちょりと入り込んでいる上、過剰に化調が振ってあった。 その店の場合、幸か不幸かサイズが大きくて、完食するまでに何度か心が折れそうになった。 あれ以降、その店にはどうしても足が向かない。 お好み焼きは、食べられないほど不味いということがほとんどない料理と思っていたが、この経験はその思い込みを崩してくれた。
老舗にも色々ある。 マスコミはとかく老舗を持ち上げるが(味より絵が優先されるので)、過去の栄光にすがっている老舗なのか、現在もトップを走るために頑張っている老舗なのか、その辺りは我々の眼力が問われるのだと思う。
|
|
|